キリストの誕生を知らせたという「ベツレヘムの星」の記述は、『新約聖書』の「マタイによる福音書」第2章にあります。
イスラエルを治めていたヘロデ王は、いつも自分の地位をうかがうものがあらわれはしないかと怖れていました。その時、占星術の学者たちが東の方からエルサレムに来て言いました。「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。私たちは東方でお告げの星を見たので、はるばる拝みに来たのです」
ヘロデ王は恐れ惑い、国の祭司や学者たちを集めて、キリストはどこで生まれたのかと問いただしました。そして、それがベツレヘムであること突き止めます。三博士には、「私も行って拝むから、ベツレヘムに行って幼子のことを知らせるように」と伝え送り出します。3人がベツレヘムを出発すると、星が彼らを導きます。そして、ついに幼子のいる馬小屋の上にその星はぴたりと止まったのです。
彼らは母マリアとともにおられる幼子にひれ伏して拝みました。そして、黄金、乳香、没薬(もつやく)の3点を贈り物として捧げます。黄金はキリストの王権への敬意、乳香はキリストの神性への敬意を象徴し、没薬は高価な薬で死体の保存に使われていたことから、キリストの死の予兆であるとされています。
マタイによる福音書には、「占星術の学者たちが東の方から来た」としか書かれておらず、人数は明記されていませんが、この贈り物の数から「3人」とするのが定着しました。礼拝を終えた博士たちは、「ヘロデ王のもとへ帰るな」という夢のお告げがあったため、王のもとを避けて別の道を通って東方へと帰っていきました。
東方とは、バビロン(古代メソポタミアの首都)と考えられ、現在のイラクにあたる地域になります。また、7世紀頃から三博士にはそれぞれ、メルキオール(黄金。王権の象徴、青年の姿の賢者)、バルタザール(乳香。神性の象徴、壮年の姿の賢者)、カスパール(没薬。将来の受難である死の象徴、老人の姿の賢者)といった名が当てられ、より象徴的な存在として絵画などに表現されるようになったのです。
左から、ヨセフ、マリア、イエス、三博士(バルタザール、カスパール、メルキオール)