キンセンカはハーブとしても用いられます
「金盞香」は「きんせんかさく」もしくは「きんせんこうばし」と読み、言葉通り「金盞花が咲き香る」という意味です。
問題なのは、その金盞花とは何の花のことか、です。七十二候の解説として有名な俳句歳時記などでも、多くの(ほとんどの)解説ではこのキンセンカを「水仙」のことであると説明しています。理由の一つは日本各地に自生するおなじみのニホンスイセン(Narcissus tazetta var.chinensis)の別名が「金盞銀台(きんさんぎんだい)」であるから、ということのようです。ですがこれはあくまで水仙の花の様子を、白い花弁を白銀の盆、山吹色の副花弁を金の盃(盞)に見立てた別名です。水仙の花の別名は「金盞銀台」ではあっても「金盞」ではないのです。きんせん、ではなくきんさんであることにもご注意ください。
「金盞」という名のついた花はちゃんとあります。「金盞花」つまりキンセンカです。
キンセンカ(金盞花/Calendula officinalis L.)はキク科の一年草で、日本には室町期ごろに渡来したといわれています。極めて耐寒性があり、秋の終わりごろから咲き始め、翌年の春まで次々と咲き続けることから別名「冬知らず」ともいわれます。花色は鮮やかな濃黄色で、秋から咲く古来の一重咲きの宿根草は、まさにその名のとおり金盞=金の盃そのものです。また香りも高く、ヨーロッパでは花を食用のハーブとして用い、香水にもなっています。時期としても特徴としても、「金盞香」はどう考えてもキンセンカのことを言っているとしか思われません。なぜ、素直に「キンセンカが咲く」という意味で捉えないのでしょう。
そもそも何よりも水仙説に無理があるのは、ニホンスイセン=金盞銀台は11月には咲かないこと。水仙の開花が時事ニュースをにぎわせるのは1月から2月にかけての晩冬~春浅い早春です。そんなことは、さして花に詳しくない人でも知っている常識です。
ではなぜ金盞はキンセンカではなくて水仙だ、と言う説が流布し、多くの人に信じられてしまっているのか。