姫路城と姫路公園には松が約300本植えられていて、毎年11月の立冬から翌年3月の啓蟄まで、約4ヵ月の間、松の幹に「こも」が巻かれていました。姫路工業大学では2002年~2007年の間、これらの約300本の松に巻かれた「こも」をはずず際、1枚ずつ点検し、中の生物をできるだけ詳しく調べました。「こも」には果たして、害虫「マツカレハ」が入っていたのでしょうか…。
調査によると、一番多かったのがクモ類、次いでヤニサシガメで、これら2種類の益虫で57%が占められていました。次いでゴキブリと続き、悪者とされていたマツカレハの幼虫などは、わずか4%にすぎないことがわかりました。さらに、マツカレハは「こも」の中にではなく、主に、「こも」に巻かれた幹の割れ目側に残っている場合が多いこともわかりました。
この調査から、「こも」の中では害虫ではなく益虫が越冬しているので、「こも」を焼却しても害虫駆除の効果はないこと、そして、「こも」を外したあとは、松の幹のほうを点検して害虫を駆除する必要があることがわかりました。
このように、「こも」による害虫駆除の効果に疑問があるためか、皇居外苑や京都御苑をはじめ、浜松市や姫路城では「こも巻き」が中止されているほか、中止を検討している自治体もあるそうです。
伝統的な「こも巻き」は、晩秋の日本の風物詩。樹木を大切にする“おもてなし”の心かも
「こも」が雪から守っています。
「こも」を調べた研究によって、松の幹に巻く“腹巻き”タイプの「こも」は、害虫駆除にはあまり効果がないことが明らかになりました。しかし、樹木全体を「こも」で巻いて霜や雪から守ったり、雪の重みで枝が折れないようにするなど、「こも」は立派に役に立っています。特に、寒さに弱い常緑樹は「こも」が巻かれることが多く、「こも」の代用品として雪囲い用のネットなども利用されます。
害虫駆除に効果がないとはいえ、松の“腹巻き”はまだまだ各地で行われていて、昔から続く晩秋の風物詩です。ワラを樹木の腹に巻いたり、全体を覆ったり。樹木を大切にする日本の“おもてなし”の心がここにも見てとれるような気がします。外国から来た観光客は、「こも」で巻かれた日本の樹木をどのように感じるのか、尋ねてみたいですね。