菩提樹の花
代表的な曲を大ざっぱに紹介します。
一曲目は「おやすみ」。「私は見知らぬこの土地にやってきた」から始まります。若者は恋人と過ごした春の記憶を回想しながらも、荒野に旅立ったのです。
前半の聞き所は、何と言っても5曲目の「菩提樹」でしょう。この曲は長調で書かれていて、途中で転調するものの、優しいメロディーにほっとします。
──若者は菩提樹の前を通り過ぎます。かつて若者はこの木陰でいつも甘い思い出にふけっていました。遠くから聞こえるかのような木のざわめきは、まるでこう語りかけてくるようです。「ここにこそ、お前の安らぎがあるのに──」。
単独で歌われることも多く、自治体の公共放送の伴奏に使われることもあり、この曲は知っているという方も多いでしょう。
11曲めの「春の夢」も、長調の曲。いかにもドイツロマン主義的なモティーフで、甘い記憶が語られます。
後半に向かって、ますます凍えるような冷え冷えとした風景と心情が歌われます。
13曲めの「郵便馬車」。リズミカルな伴奏は、郵便を運んできたことを知らせる馬車のラッパの響きをもしています。若者は自問します。「恋人からのたよりなどないはずなのに、なぜ高鳴るのか、私の心よ!」