メスとオスが互いに愛し合うことから「をし(愛)」が鳥の名になったというオシドリ。「思い死ぬ鳥」を略した名という説もあります。夫婦仲が非常に睦まじいことをあらわす『鴛鴦の契り(えんおうのちぎり。鴛はオス、鴦はメスのオシドリ)』という言葉は、こんな哀しい故事がもとになっています。
中国の春秋時代。康王は、侍従である韓憑(かんぴょう)の妻が非常に美しいのに目を付け、無理やり側室にしてしまいました。妻を奪われた韓憑が恨むと(当然ですね)、怒った王は捕らえて罰し、手紙でこっそり夫に想いを伝えようとする妻を妨害。耐えかねた韓憑はとうとう自殺してしまいます。それを知った妻は「私が死んだら夫と合葬してください」と遺書を残して、王とでかけた先の高殿から身を投げます(とっさに袖を掴まれても破れるように、わざと腐らせた着物を着ていたといいます)。
王は「そんなに愛し合っているなら二つの墓を一つに合わせてみるがいい」と、ふたりを向かい合わせに葬ったのです。すると、一晩のうちに梓の樹が両方の墓から生えてきて、土の下では根が交わり地上では枝が絡まり合うと、一対の鴛鴦が巣を作り、日夜そこで寄り添って鳴き続けました。それを見た人々は、その鳥を韓憑夫妻の生まれ変わりだと言いはじめ、この木を『相思樹』と名付けたそうです。
オシドリのカップルは、都会でも木が茂る公園の水辺などで見ることができます。目を引くのは夫の派手さ華やかさ。お尻の方には『思羽根(おもいばね)』とも呼ばれる、イチョウみたいな羽がピンと上向いています。オスのオシドリは、日本にいる超美しい野鳥として世界のバードウォッチャーたちの憧れの的なのです。
そんなルックスのイケメン夫が、控えめな妻を片時も離さずエスコート! 誰かがちょっかいを出そうものなら激しく攻撃、全力でお守りし毛繕いまでしてあげる献身ぶりです。妻を奪われた韓憑さんの情念がDNAに刻み込まれているかのようです。美しすぎる夫の姿も、これでなるべく奥さんの方には目を付けられないようにしたいという気持ちのあらわれかもしれません・・・。
めくるめくお花見デート