「大雪」と聞くと、何となく連想してしまう北海道の「大雪山」。一つの山の名かと、ずっと勘違いしていたのですが、「大雪山系」とも「大雪山連峰」とも言うように、旭岳を主峰とする非常に広大な山岳地帯を指すようです。トウムラウシ山から十勝岳連峰、然別火山群なども含む、いわゆる北海道の屋根と呼ばれる一体が、大雪山国立公園に指定。手付かずの大自然が残る壮大なエリアです。
この時期は当然ながら白銀の雪に覆われている大雪山系。その十勝岳付近の山小屋が、かつて雪の結晶の研究の舞台となったことがありました。
それは、1933年ごろのことで、天然雪の研究から出発し、やがて世界に先駆けて人工雪の実験に成功した世界的雪氷学者である中谷宇吉郎博士が、この地で雪の結晶の写真約3000枚を撮影したのです。
中谷博士たちは、馬そりで十勝岳中腹に建つ個人所有のヒュッテまで機材を運搬。ベランダに雪で固めたテーブルを作り撮影装置を据え付け、連日深夜まで撮影に及んだとか。これをもとに博士は結晶形の分類を行い、「雪の一般分類表」を発表。この分類表はその後、世界的な分類基準の原典として広がっていったのです。
~十勝岳の思い出は皆なつかしいことばかりである。冬の深山の晴れた雪の朝位美しいものは少いであろう。登山家やスキー家たちが生命の危険にさらされながらも、冬の山へ出かけてゆく気持がわかるような気がした。十勝岳での雪の仕事のことは今も度々思い出されるのであるが、その印象は美しいことばかりのようである~
と、博士は著書「雪」(北海道における雪の研究の話)の中で、当時をふりかえっています。