木登りが得意
ハクビシン(Paguma larvata)は、漢字では白鼻心または白鼻芯、顔の中心に縦に白く太い線が入ることが特徴のネコ目・ジャコウネコ科の哺乳類です。
全長は約90~110cm、尾は約40~45cm。体重は約3~4kgほどで、ほぼネコと同じくらいの大きさですが、シルエットはかなり違い、ネコよりも全体に体が細長く華奢で、尻尾もネコより太くなります。体の大部分が灰褐色から茶褐色で、四肢の先は黒色。前足・後足とも五本指で爪が鋭く長く、指の間には水かきがあります。この足で、ベタ足で歩き、巧みに木や塀をのぼります。
繁殖シーズンは主に夏から秋にかけて1~2匹を出産、子育てのために人家の屋根裏に侵入し、糞尿や害虫、騒音被害をもたらしています。またハクビシンは果物が大好き。果樹農家はかなりの被害を受けているようです。
ここ数年、こうしたハクビシンの被害報告、駆除依頼が増加しており、頭数が爆発的に増えているのではないか、という推測もされています。特に都心の市街地で目撃されることが多くなり、東京23区内では約1000頭ほどが生息し、その数は狸より多いといわれます。筆者も何度となく見かけています。仲良しだった野良猫と一緒にいたときにも一度ハクビシンと出くわしたことがあり、そのときにはネコ、ためらわずハクビシンに突進していき体当たり。ハクビシンは反撃することもなくあわてて逃げていきました。これを見ても野良ネコとはテリトリーがかぶり競合状態のようですが、直接対決ではちょっと分が悪く、基本的におとなしい性質のようです。
でも、実際本当にハクビシンが増えているのか、増えているとしたらその増加数はどれくらいで理由は何なのか、というと、どうもはっきりしていないようなのです。というのもハクビシンは一応外来生物扱いはされていますが、いつごろ、どうやってやってきたのか、はっきりしていない謎の生物なのです。ミンクやアライグマなど、近年になって野生化した外来動物は、ミンクが1930年ごろから毛皮をとる目的で北海道に持ち込まれ、逃げ出した個体が野生化したという経緯が、アライグマも1970年代にアニメのブームでペットとして輸入された後遺棄されて繁殖したということがわかっていますが、ハクビシンについては明治から戦前にかけて毛皮用に輸入された、という推測はされていますがはっきりとした記録があるわけでもなく、またその時期と近年の繁殖数増加とのタイムラグは少なくとも半世紀以上もあり、少々怪しい推測。
ハクビシンが日本に持ち込まれた記録ではっきりしているのは江戸後期の1833年、オランダ船が長崎出島に多数の外国産動物を持ち込んだ中にハクビシンが含まれていたようです(唐蘭船持渡鳥獣之図)。ただ、鎌倉時代には日本に移入していたことをうかがわせる文献もあり、何度かにわたり少ない頭数が貿易によって持ち込まれ、それにより野生化していたのではといわれています。