夏の夕暮れ
俳句などの季節は基本的に旧暦によっていますが、現在の私たちの「夏」はやはり7月からですね。
そこで早速、初夏のこころを詠った、さまざまな歌句をランダムに挙げてみましょう。
〈夏はきぬ相模の海の南風にわが瞳燃ゆわがこころ燃ゆ〉吉井勇
〈青梅に蜜をそそぎて封じおく一事をもつてわが夏はじまる〉安立スハル
〈かんがへて飲みはじめたる一合の二合の酒の夏のゆふぐれ〉若山牧水
〈枕べの百合のにほひのあまり強し花の向きをば変へていねけり〉三ヶ島葭子
〈初夏の雨匂ひつつ去り夕暮の光の裳裾ひとびとを染む〉影山一男
〈はつなつのほとけの眉のあはれなり〉角川春樹
安立スハルの詠う梅酒の仕込みも、初夏の風物詩ですね。
吉井勇が詠う夏に向かう心の高揚、そして影山一男の歌に詠われているような、水を含みながらも光があたりを満たしていくような初夏独特の感覚は、誰にでも経験があるのではないでしょうか。