雷電峠の刀掛岩。岩内町のシンボル。
岩内町は、札幌から車で2時間。北海道の西側、積丹(しゃこたん)半島の西側のつけ根に位置しています。明治28年に岩内町で生まれた下田喜久三氏(東京薬大学卒)は、地元の農家が冷害で大きな被害を受けるのを見て、北海道のような北国では冷害に強い作物が必要であると痛感しました。
そんなとき、作物が冷害にあったにもかかわらず、ある農家の畑に野生のホソバキジカクシが元気に育っているのを見つけました。これがアスパラガスの仲間です。春に収穫した後は、秋まで根に栄養分がたまるアスパラガスは、冷害の影響を受けにくい作物なので、寒い夏でも農家の庭先で元気に育っていたのです。
下田氏は早速アスパラガスの種を輸入し、数年かけて研究を重ね、1922年、北海道でもよく育つ新品種「瑞洋(ずいよう)」を開発しました。翌23年には、岩内町の隣町、前田村(現・共和町)に40ヘクタールの農場を設け、これが日本初のアスパラガスの本格的な栽培となりました。
このように、下田氏によって日本ではじめてアスパラガスが栽培されたことを記念して、岩内町には、「日本のアスパラガス発祥の地」の記念碑があります。また、岩内町郷土館では、アスパラガス発祥の地に関連する資料がそろっています。
〈参考:北海道新聞2015年5月16日号夕刊 「冷害に強い作物求め ②アスパラガス」〉