シャトーレストラン ジョエル・ロブション(恵比寿)
著書におけるパンの章は、ロブション氏の幼い日の思い出で締めくくられています。ナイフの刃先でパンに十時の切れ目を入れてからでないと、パンに手をつけてはいけなかったという少年時代。一時代前までは、誰もが尊敬の念を込めてパンに触れていたといいます。とても厳格な家庭を想像してしまいますが、ロブション氏の心に残るのはパンの記憶とともにある家族の温かさです。大きな丸型のパンを胸に抱え、家族一人ひとりにパンを切り取ってくれたというお母さん。
「生命を授けてくれた人の手からパンをもらうとき、パンという食べものだけでなく、生きるために大事な何かをも一緒に受け取っているような気がした」
この一文から、少年時代から食を大切にし敬う家庭に育ち、料理を芸術にまで高めたロブション氏のバックグラウンドに思いを馳せるとともに、再び自分の食に対する意識や子育てを顧みることに……。
一方で、日本人の主食である米は、多くの神事と結びつき八十八の神が宿るといわれています。日々の生活のなかで、わたしたちは米に対する感謝の念を忘れないようにしたいものですね。