桑の実は甘くて美味しい人間のおやつ
日本の絹文化に親しむ入り口として、カイコを飼育する幼稚園や学校が増えているそうです。カイコは清潔で 刺したり噛んだりしないので、小さな子供がお世話しやすいのも人気の理由。しかも幼虫から産卵までを目近で観察できるので、昆虫への理解を深めるきっかけにもなりますね。実際、虫嫌いなのに我が子が持ち帰ってしかたなく一緒にお世話をはじめた保護者たちが、まさかのカイコ愛に目覚めるケースが少なくないのだとか。
ご存じの方も多いと思いますが、野性のカイコは生息しません。カイコという昆虫は、マユを作る蛾が長年にわたり人類によって改良された、完全な家畜なのです。
もともとはサナギを食するための虫だったらしいとはいえ、すでに4500年前の中国では絹糸目的で飼育されていたようです。その糸はやがてシルクロードを渡り、世界の宝とされました。日本でも『日本書紀』には宮中で養蚕がもう行われていたことが記されています。
現在も皇居敷地内に『紅葉山御養蚕所』があり、毎年春になると皇后陛下がカイコのお世話を開始します。4回の脱皮を経て劇的に成長しマユを作るカイコ。今の時季は食べ盛りのカイコに桑の葉を与える「ご給桑(きゅうそう)」などがニュースになり、6月には種を次代に遺すため卵を保管する「種採り」も行われます。
皇居で育てられているカイコのうち、希少な日本産種の『小石丸』はマユが少々小ぶりで古代の絹にもっとも近く、そのおかげで正倉院の絹織物が復元模造できたのだそうです。皇后陛下の絹製品は、外国の賓客へのスペシャルな贈り物にも!
カイコは 想像以上に やんごとなき虫のようです。