枇杷(ビワ・Eriobotrya Japonica Lindley )は、バラ目・バラ科に属する常緑高木。広い意味ではイチゴやナシ、リンゴ、プラム、サクランボや桃などの近縁です。バラ科の果物らしく、やわらかな酸味と華やかな甘みが美味しいですよね。手で薄皮をむいてまるごとかぶりつける手軽さも魅力。
学名にJaponicaと日本の名が入ってはいますが原産地は中国の揚子江沿岸地域。日本には先史の頃から海流で流れ着いた種が日本海沿岸に根付き自生していたようです。
食用としての栽培は鎖国時代の江戸中期頃、現在でもビワの生産が盛んで皇室献上枇杷を生産している千葉県の富浦で宝暦元年(1751年)にはじめられたといわれています。その頃の果実は今よりも小ぶりで、主に江戸に出荷されていました。一方、唯一の貿易港長崎にさまざまな外国からの作物、品種などが在留外国人の食糧確保のために持ち込まれていましたが、その中で中国から「唐枇杷」が輸入され、この唐枇杷から19世紀前半ごろ、長崎市茂木(もぎ)町で現代のビワ品種の祖先となる「茂木ビワ」が作出されました。
亜熱帯から温帯地域に生育する植物なので年平均気温15度以上、最低気温は-5度以下にならない温暖な場所でなければ栽培には適しません。また海風が実を甘くするとも言われ、海岸線沿いの温暖な地域、長崎、千葉、鹿児島、四国や兵庫が主な産地となっています。
現在では長崎県や鹿児島県、香川県など西日本では先述した「茂木」系、四国や千葉、兵庫で生産される「田中」、千葉県富浦で生産され「房総びわ」というブランドで流通する「大房」など、さまざまな品種が作られています。
さてそんなビワですが、何故か昔からまことしやかに語られる俗説が「ビワの木を庭に植えると病人(死人)が出る」「ビワの木は人のうめき声を聞きながら育つ」などの不吉なもの。聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
でも、その割には広めの庭のある農家などに植えてあるのはよく見かけますし、言われているほど信じられてはいないようにも思われます。