冬の夜空で輝く星といえば、「シリウス」を思い浮かべる方が多いかもしれませんね。
シリウスといえば、全天で最も明るい恒星として有名です。
ですが、それよりもずっと下の位置に、全天で「2番目に」明るい恒星が輝いているのをご存じですか?
その星「カノープス」を日本から見ることができるのは、冬のあいだの限られた期間だけ。
いつ、どこに行けば、見ることができるのでしょうか?
「カノープス」の名前にまつわる、不思議なお話
これがカノープス(カノポス)壺。何を入れたのかは調べてみてください
「りゅうこつ座」を構成する星々のひとつであるカノープス。
不思議な響きを持つその名は、トロイア戦争で活躍したメネラーオス王の総舵手の名前に由来するとも、水先案内人の名に由来するともいわれます。
「りゅうこつ」=竜骨とは、船の船首から船尾にかけてを貫くように配される構造材のこと。
竜骨の先端に輝いているように見える星だということで、カノープスの名がつけられたのでしょうか。
ところで、古代エジプトといえば「ミイラ」が有名ですが、ミイラを製作する際、使われた「カノープス壺」という容器があります。後世になってつけられた名称なのですが、気になる方は調べてみてくださいね。
北海道や東北では、カノープスは見えない?
基本的に、南天の星であるカノープス。
日本から観測するのが難しい星として知られています。
東京での「南中高度」は、最も条件がよい時でもたったの二度。まさに地面すれすれです。
また、大気の影響を受けて実際より暗く見えることも多いため、なおさら見つけにくくなるのです。
仙台や札幌では、地平線よりも上にカノープスが上ってこないため、観測することは不可能。大気や天候、観測地の標高などにもよりますが、「福島県」より北では観測することができないといわれます。
古代中国、そして昔の日本。カノープスにつけた名前は?
カノープスを「長寿の象徴」と考え、「南極老人星」と名づけたのは、古代中国の人びと。
地平線すれすれまでしか上ってこない、この星を見ることができれば長生きができると考えたのです。
古代中国の都市があった場所と、東京や大阪は緯度がほぼ同じ。いにしえの人びとになりきって、冬空にカノープスを探すのも楽しそうです。
一方、日本では、南の空にちょっと上ってすぐに沈んでしまうことから、カノープスを「横着星」などと呼ぶ地方もあったそうですよ。
日本国内で、カノープスを観測するコツは?
沖縄・波照間島で撮影された、シリウスとカノープス
・南へ行けば行くほど見えやすい
・山や高台、ビルなどに上ると見やすくなることも(街灯りに注意)
・実際より暗く見えることが多いため、双眼鏡を使うのがおすすめ
「寒い季節なので、屋外の観測はちょっと……」という方におすすめなのが、南側の視界の開けた場所にあるホテルに宿泊すること(お部屋の向きも要確認)。これほど手間隙+お金をかければ、大きな窓やバルコニーから、快適な観測が楽しめそうですね。
インターネットで閲覧できる星空マップ、スマートフォンで使える天体観測アプリなど、近年は星空を楽しむための情報も充実しています。南の低い夜空に輝く星に、長生きができるようお願いしてみてはいかがでしょうか?