激しさは通り過ぎてゆき・・・
『時雨(しぐれ)』とは、降ったかと思うと晴れ、また降りだし、短時間で目まぐるしく変わる雨のこと。「過ぐる」が語源ともいわれています。「霎(こさめ)」といってもいわゆる小雨ではなく、さーっと降って止む雨なのですね。一般的には冬の雨とされていますが、春や秋にも降り、季節特有の想いを人に抱かせます。
秋は低気圧と高気圧が日本の上空を行き交い、天候が変わりやすい時期。不安定な空模様に影響されてデリケートな女性の心は、笑っていたかと思うと急に涙もろくなったりと、くるくる変化してしまいます。それを「女心と秋の空」といったりしますね。
ところが、この諺はもともと「男心と秋の空」だったのをご存じでしょうか。
昔は、心が移ろいやすいのはもっぱら男性のほう・・・それも、女性に対する恋愛感情が変わりやすいという意味だったようです。 室町時代の狂言『墨塗』には「男心と秋の空は一夜にして七度変わる」というセリフがあり、この諺ができた当時(江戸時代)も、既婚男性の浮気はわりと寛容に扱われていた様子。それをいいことに、移り気で女を泣かす夫たちが多かったらしいです。女性にとっては「もう秋の空みたいなもんだから、しょうがないわね」と諦めたり、「今はいいけど信用できないかも?」と用心したりするための諺でもあったのですね。
現在ほとんど耳にしないのは、恋愛事情がすっかり変わって男性に甘くない世の中になっているから?