卵のときではなく「孵化したとき」にいた川の匂いをたよりに帰ってくる、というサケの性質を利用して、サケがいなくなってしまった川に卵を持っていって孵化させ、もういちど帰ってきてもらおうという試みもおこなわれています。現在、日本産のサケのほとんどは、河口付近で捕獲され人工孵化によって育てられているのです。サケを自然のままで産卵させようとしても、途中で密漁されたり、産卵できる場所がととのっていなかったりするからだそうです。卵から稚魚になるまで育てて川や海に放すと、そのサケが自分でエサをとって大きくなり、再び戻ってきてくれるのですね。
昔は、北海道から東北地方にかけての川のいたるところで、自然のままで産卵して増えたサケがとれていたといいます。アイヌの人たちは、サケを「神の魚(カムイチェプ)」といって大切にしていました。産卵で力尽きたサケの体は生きものに食べられるだけではなく、バクテリアによって分解されてプランクトンを増やし、翌春に孵化した稚魚たちはそれを食べて成長するのです。命がけの長い旅をして帰ってきたサケがふるさとの水の中で安心して生涯を全うできるよう、川に心を向けていたいですね。
ふるさとに帰れるのは100匹のうち2匹以下。がんばれ〜