ル・コルビュジエによる建造物の基準寸法「モデュロール」
コルビュジエが新たに「人体の寸法」と「黄金比」からつくった建造物の基準寸法「モデュロール」。フランス語のmodule(モジュール・寸法)とSection d'or(黄金分割)をあわせた造語で、コルビュジエを語るうえで重要な概念です。人体のサイズを基準におくことで、建築だけではなく家具から都市に至るまで、あらゆるものが有機的に連関し、美的にも機能的にも調和させることを目指して発表されました。
かつての「モデュール」はおもに建築の「工業生産化」の問題としてとらえられていました。これに対してコルビュジエは、モデュロールを「視覚的な側面」「機能的な側面」「工業生産的な側面」の3つの条件を統合する寸法とし、近代建築の基本的な問題として提示しました。
美的で機能的な設計を可能にするために、絶対的な数字で裏打ちされた黄金値を用いようとする試み。それは個人の感覚に頼らずに数学的に計算された、つまり誰にでも利用可能な数字を示そうとしたのです。広い視野で芸術や建築のためにできることはないかと常に考え、行動する。このようなコルビュジエの生き方が、モデュロールには強く現れているのではないでしょうか。
その後、その複雑さもあり残念ながら建築界に根付くような規格にはなりませんでした。しかし、価値ある試みとして建築界にインパクトを与えたことは確かで、日本を代表する建築家である丹下健三は日本版のモデュロールを作成するに至っています。
なにより、コルビュジエが描いたモデュロールが魅力的!どことなくユーモラスな温かみが伝わってきます。著書の図版として、モデュロールを適応した建築物の壁面のレリーフとして、その造形は今なお息づいています。