田の神様(たのかんさあ)
最近では田植え機が普及して、苗代(なわしろ)で稲の苗を育てる農家はめっきり少なくなりましたが、かつては苗代に種もみを植え、水をはって苗を育てました。芽が出て苗が20cmほどになると、抜き取り、田んぼに植えかえます。人の手による田植えは、親類やご近所、総出で行われていました。
春になると、山の神が里へ降りてきて田の神となり、農民の田んぼの作業を見守り、稲が順調に育つのを助けるといわれています。秋になって収穫が終わると田の神は山に帰り、再び山の神となります。
苗代に種もみをまく日、農民は苗代の水口(みなくち)に、焼き米や御幣、松の苗や木の小枝、ワラの束など、そして、依代(よりしろ)となる季節の花を供え、いい苗が育つようにと田の神に祈ります。供えるものは地方によってさまざまです。農家ごとにひっそりと行われますが、豊作を願う心はみな同じです。苗の出来によってその年の米づくりが左右されるので、苗代での苗づくりは、とても気を遣う作業でした。