秋の七草のひとつ女郎花は、控えめながらもたおやかな風情がある草花。日当たりのよい草地などに生育する大型の多年草で、茎頂で枝を分けたその先に、小さな黄色い花を咲かせます。
「目を大きく開いても、じきにぼうと霞んでしまいそうなのがこの花で、丈のある細い茎の上に咲いた女郎花から、私はよく扇を開いた女の舞姿を連想する」とは、作家・竹西寛子さんがこの花に寄せて綴った一節。
いにしえ人に好まれた女郎花。この花の趣を詠んだ歌は古今和歌集にも多く集められています。平安の貴族たちは、物合(ものあわせ)という優雅な遊びを楽しんでいたようですが、その中のひとつが「女郎花合(おみなえしあわせ)」。和歌を添えた女郎花の花を持ち寄って、優劣を競ったのだそうです。
また、「女郎花」の語源は、オンナメシ(粟飯)からという一説も。よく似てはいるが姿が逞しい「男郎花(おとこえし)」の花は白く、こちらはオトコメシ(男飯・米)からこの名がつけられたとか…。
「女郎花少しはなれて男郎花」は、高浜虚子の次女、昭和期の俳人・星野立子(たつこ)作。自然を伸びやかに写生したこの一句から、女郎花がすっと自らの力で凛と咲く秋の野が、鮮やかに目に浮かぶようです。