ハスの花
このように人間の命をはるかに超えた時を生き続けるハス。特にアジアにおいて深い信仰のシンボルとなったことは、偶然ではないのかもしれません。
盆花といえば桔梗やミソハギ、山百合などの総称ですが、ハスは別格の「常花」として、仏壇に金銀の造花が常に飾られ、仏具の台座は蓮華座となり、仏教においてハスの存在は仏の悟り(涅槃)そのものの象徴として別格の扱いとなっています。「蓮華」の言葉の通り、ハスもスイレンもともに「蓮華」で区別はなかったのですが、そんな時代でもやはりスイレンよりもハスはより高貴なものとして扱われ、白蓮を「プンダリーカ」といい、これは「妙法蓮華経」の原文「サッダルマ プンダリーカ スートラ(सद्धर्मपुण्डरीक सूत्र, (正しい教えである白い蓮の花の経典)」と同一であり、五色あると説明される蓮華の中で最高のものとなります。
一方、私たちが見る、より一般的な赤みがかったピンクのハスは「パドマ」といいます。これは、インド神話のヴィシュヌ神のへそから生じた「世界蓮」=ローカ・パドマと同一視されます。ローカ・パドマからブラフマー神が生まれ、世界の創造神となっていきます。ヴィシュヌから生じたローカ・パドマはまた、ヴィシュヌの妻・ラクシュミ―でもあり、この女神はブラフマーの母、つまり「世界の母」としてインドで崇拝され、ピンクのハスはその象徴でした。
かつては蓮の葉を蒸しあげ細かく刻んで炊き立てのご飯と混ぜた蓮葉飯(はすはめし)は、盂蘭盆、仏教祭礼の供物として作られていました。またこれをかゆにした蓮粥という料理もあり、お盆や仏教行事とハスは、切っても切れない深い関わりがありました。