実りの秋
そもそも「秋」には夏の次の季節を指す意味だけではなく、「みのり」「とき」といった意味もあり、和歌の場合には、同音の「飽き」にかけて使われることもあります。
〈わが袖にまだき時雨(しぐれ)の降りぬるは君が心に秋(飽き)や来ぬらむ〉古今和歌集
「まだき」は「まだその時期にならないうちに」という意味。(晩秋のものとされる)時雨が降り始めたのは、あなたの心に季節の「秋」が来て(その季節と同じ名前のように)、私に「飽き」てしまったのでしょう、という掛詞になっています。
いろいろな植物が実り、ものごとが充実してくる季節、しかし満ち足りてしまうことは同時に飽きてしまうことにも通じる ── 秋という言葉は、そんなニュアンスを持ってきたようです。