北上みちのく芸能まつり 鬼剣舞
賢治の作品は、自然崇拝にもとづく世界観と、独特な音感に彩られています。故郷の自然を愛し、そして音楽に夢中になった賢治は、岩手に古くから伝わる剣舞を、『原体剣舞連(はらたいけんばひれん)』という作品にしています。旧仮名遣いです。
・原体剣舞連(はらたいけんばひれん)
(mental sketch modified)
dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah
こんや異装(いさう)のげん月のした
鶏の黒尾を頭巾にかざり
片刃の太刀をひらめかす
原体(はらたい)村の舞手(をどりこ)たちよ
鴇(とき)いろのはるの樹液を
アルペン農の辛酸に投げ
生(せい)しののめの草いろの火を
高原の風とひかりにさゝげ
菩提樹(まだ)皮(かは)と縄とをまとふ
気圏の戦士わが朋たちよ
[作品引用:吉本 隆明『宮沢賢治の世界』筑摩書房]
代表作の詩集『春と修羅』に収録されていますが、宮沢賢治は晩夏にこの踊りをみて、作品にしたとも言われています。剣舞は、岩手県各地に伝わる民俗芸能。原体地区の剣舞は、子どもが舞手となる「稚児剣舞」であることが特徴です。
賢治は生前不遇で作家としてはほとんど評価されませんでしたが、この鮮明なイメージ表現は、とても現代的。時代を先取りしていたのかもしれません。