時には巣から落ちてしまうことも…
ほとんどの野鳥は、留鳥も渡り鳥も含めて、春の訪れとともに繁殖期に入ります。春はつがい、産卵し、子育てをする季節。たとえばスズメは、産卵に5日、抱卵に12日、巣立ちまで14日ほど。スズメと同様セキレイなどの多くの小鳥は雛が孵化して2週間前後、親鳥がせっせとえさを巣に運ぶ姿が見られます。メジロは育ちが早く10日ほど、ツバメやムクドリでは3週間、大型のカラスは1か月ほどつづきます。
そして5月から6月には親鳥とほぼ同じ大きさに育った若鳥は飛行訓練をはじめ、近くまで飛んで巣に戻ったりを繰り返しつつ、飛行技術を向上させていきます。
子育てのサイクルの短い鳥たちの場合、夏までの間に2サイクルこなすつがいもあり、夏の間は飛ぶ姿もたどたどしい若鳥が、親のまねをして空中で方向転換しようとして失敗したり、枝にうまく留まれずじたばたしたり、親鳥に地上で口移しでエサを貰ったりと、かわいい姿をしばしば見ることが出来ます。
ただまた一方、捕食者のネコや野獣には、若鳥は格好の獲物。熟練した成鳥を狩るのはむずかしくても、比較的容易に捕らえられる若鳥の相当数が餌食となってしまいます。飛行訓練中に墜落して、地上でうずくまる雛鳥を見つけることが多いのもこの時期。先に飛べるようになった兄弟に押されて、まだ飛べないのに巣から墜落することもあるようです。そうした雛鳥を見かけると、つい助けてやりたくなりますが、怪我をしているようだったり明らかにまだ羽根の生えそろわない若年の雛であれば保護が必要となりますが、そうでない場合は近くで親鳥が見ていることが多いので、安易に手を出さないように気をつけましょう。往来の激しい道路や水の中などにいた場合は、近くの安全な草むらなどに移動してあげると、たいていの場合は自分で飛びたっていきます。
大型の猛禽である鷹類はもう少し大変。1月頃から求愛期が始まり、3月頃の造巣期に雄雌のつがいで木の枝などを運んで巣作りが行われます。営巣木は、杉やマツ、ヒノキなどの高い樹間にかけられます。産卵は4~5月ごろで、普通2~3個を数日の間を空けて産み落とします。抱卵期は35~38日。 孵化してすぐの雛は、ヒヨコとおなじ位で、約1ヶ月かけて親鳥とおなじ位の大きさになり、飛ぶ訓練が始まります。と、このように日数を数えてみますと、実際時候通りの時期に、鷹の飛行訓練は始まることがわかります。
現代よりも鷹が身近にいただろう時代には、私たちがスズメやセキレイ、ツバメの若鳥たちの姿を見るように、若い鷹が訓練する姿を見ていたのでしょう。