500系新幹線。カワセミのくちばしを真似しました。
ヨーグルトのフタに採用されたロータス効果。水滴がハスの葉の上をスルッとすべる撥水構造を私たちの暮らしに役に立てられたら…。
このように、生物や動物の生態を応用する技術は「バイオミメティクス(生物模倣)」または「バイオミミクリー」といいます。バイオミメティクスという考え方は1950年代にはすでに提唱されていましたが、1990年代後半からナノテクノロジーが急速に進化したことにより、再び注目が集まるようになりました。
ハスの葉のロータス効果以外にも、私たちの暮らしの中では、いろいろな生き物の構造が模倣され、応用されています。たとえば、話題になったところでは、サメの肌を模倣した高速水着。ほかにも、カワセミのくちばしを模倣した500系新幹線の先頭車両、ひっつき虫と呼ばれるオナモミの種子を模倣したマジックテープ、ヤモリの足の裏の構造を模倣した接着剤を使わない接着テープ、フナクイムシが木に穴を開けて掘り進む工程を模倣したトンネルの造り方などなど。このように、意外なところで意外なものが模倣され、応用されています。
私たち人間の歴史はせいぜい20万年ほど。一方、植物や昆虫は何億年も生きています。人間は、長い時間をかけてつくられた生物の特異な構造にはかないませんが、科学が進歩すればするほど、私たちの暮らしに、このバイオミメティクスを利用した技術がますますとり入れられることでしょう。
〈参考:北海道新聞2016年6月6日号夕刊7面 「バイオミメティクス(生物模倣)、動植物の生態 新製品のヒント」〉
6月に入り、ハスが見ごろを迎え、各地で美しいハスの花を見ることができます。梅雨で雨の日が多いですが、ハスの葉の上では水滴がスルリとすべり、気持ちいいほど水をはじいています。このハスの葉のように、ランプの表面で氷や雪がスルッと落ちてくれるLED信号機があれば…。LED信号機に高校生のアイディアが実用化される日が楽しみですね。