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Utsuke Bron

着雪するLED信号機に、ハスの葉の撥水構造を応用 !! 高校生がヨーグルトのフタで着想。

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着雪するLED信号機に、ハスの葉の撥水構造を応用 !! 高校生がヨーグルトのフタで着想。

ハスの葉の上をスルリとすべる水滴。この撥水構造がヨーグルトのフタに応用されていたとは。

ハスの葉の上をスルリとすべる水滴。この撥水構造がヨーグルトのフタに応用されていたとは。

ちょっと前までは、ヨーグルトのフタの裏側にはヨーグルトがべったりとくっついていて、それをスプーンでこそげ落としたり、洗い落としたりするのがけっこうな手間でした。でも、このごろのヨーグルトには、あまりくっついていないような…。これは、最近のフタには、ハスの葉が水をはじく撥水構造が利用されているからなのです。
青森に住むある高校生は冬になるといつも、LED信号機に雪が付着するのを見て、見づらくて危ないなあと思っていました。そんなとき、毎日食べるヨーグルトのフタにヨーグルトがくっついていないことを思い出し、ふと、この構造をLED信号機に応用すれば、信号機に雪がつかなくなるかも、と思いつきました。そして、この発想は京都大学の目にとまり、実用化に向けて共同開発されることになったのです。
6月からハスが見ごろを迎えています。ハスの葉が水をはじく構造がヨーグルトのフタへ、さらにそれがLED信号機へ応用されるなんて!! また、このような生物の特異な構造が模倣されているのは、ハスの葉だけではないようです。 

吹雪で着雪するLED信号機。表面温度が低いので、熱で雪が解けない。

LED信号機は雪がくっついて見えにくい。

LED信号機は雪がくっついて見えにくい。

雪国にお住まいの方なら何度か体験したことがあるかと思いますが、吹雪の日はLED信号機に雪がくっついて、信号機の色が非常に見えづらくなります。ただでさえ吹雪のときは視界が悪いのに、信号機の明かりが見えない…。ドライバーにとって、これほどの恐怖はありません。
LED信号機は明かりがついているほうの表面温度が高くならないので、雪がくっつくと、解けずにそのまま残ってしまいます(従来型の信号機は表面温度がLED信号機より20℃高いので、くっついた雪は解けてしまいます)。LED信号機に付着した雪を取り除くのは、警察官が長い棒で雪をかき落とすというアナログな方法に頼っています。
最近のLED信号機は雪がつかないように改良が加えられていて、特殊な形の透明なカバーをつけたり、信号機の角度を20°ほど下に向けたりするなどの工夫がなされていますが、改良されていないままのLED信号機が多いのが現状です。 

ヨーグルトがフタの裏側にくっつかない。これをLED信号機に応用できないか。

葉の上を水滴がコロコロ落ちる。

葉の上を水滴がコロコロ落ちる。

省エネに有効なLED信号機。しかし、肝心の吹雪のときに見えづらい。ランプの表面に雪が残らなければいいのになあ…。青森のある高校生が、何とかできないものかと考えていたとき、ふと、ヨーグルトのフタの裏側にヨーグルトがくっつかない様子が頭に浮かびました。
どうしてヨーグルトのフタにはヨーグルトがつかないのだろう…。いろいろ調べてみると、最近のフタにはハスの葉が水をはじく撥水構造が施されていることがわかりました。ハスの表面にはとても小さい突起が無数にあり、空気を抱え込むので、水が乗っても転がるように落ちていきます。ハスは英語でロータス(lotus)。そして、このハスの葉の撥水のしくみを「ロータス効果」といい、その構造に似せることを「ロータス加工」といいます。
この高校生が雪の降る日、ロータス加工のフタと、加工がされていないフタを学校の窓に貼りつけてみると、ロータス加工のフタには雪がほとんどつかないことがわかりました。また、メーカーから取り寄せた資材を-5℃の冷凍庫に入れても、ほとんど氷がつかなかったそうです。
この研究成果を、昨年11月に京都大学で開かれたアイデアコンテストで発表したところ、グランプリに選ばれ、京大の研究者などの目にとまり、青森の高校と京大で共同開発する運びとなりました。
〈参考:北海道新聞2016年4月13日号夕刊8面 「ヨーグルトのふた 防雪着想、LED信号機に青森の高校生」〉
〈参考サイト:産経ニュース2016年4月5日 「雪国向けLED信号機実用化へ 青森・名久井農高と京大が共同開発」〉 

水をはじき、汚れを落とすロータス効果。塗料や撥水スプレーなどにも応用されている。

水滴にからめ取られ、汚れもすべり落ちる。

水滴にからめ取られ、汚れもすべり落ちる。

ヨーグルトでもおなじみの森永乳業㈱は、東洋アルミニウム㈱が開発した「TOYAL LOTUS®」という、撥水機能にすぐれた素材を採用し、水をはじくヨーグルトのフタを共同で製品化しました。そのおかげで消費者である私たちは、フタについたヨーグルトをスプーンでこそいだり、フタを水洗いしたりする手間を省くことができるようになりました。
ハスの葉のロータス効果は、葉の表面の水滴が表面張力によって丸くなり、コロコロと転がります。そして転がるときに葉の上にいる小さな虫、泥や異物をからめ取りながら落ちていきます。つまり、撥水しながら、葉の表面をきれいにクリーニングしているのです。このように、撥水効果+自己洗浄が施されるので、ハスの葉の表面はいつもきれいなままでいられます。
そして、このロータス効果は、ヨーグルトのフタ以外にも、さまざまな場面で使われています。たとえば撥水スプレー。スニーカーやムートンブーツに吹きかけておくと、水にも濡れず、しかも汚れもつきません。スーツや家具、車のシートなどにスプレーしてもいいかもしれません。
また、傘やレインコートはいうまでもなく、家の外壁、ビニールハウスのガラス屋根、便器や洗面台、車の外装やサイドミラー、繊維そのものなど、この、濡れない、汚れないロータス効果は、さまざまな場面で応用されつつあります。
〈参考サイト:東洋アルミニウム㈱ 製品紹介「TOYAL LOTUS® ラッカーコートタイプ」2012年冬〉 

ハスの葉以外にも、まだまだある「バイオミメティクス」。生物の構造に学ぼう !!

500系新幹線。カワセミのくちばしを真似しました。

500系新幹線。カワセミのくちばしを真似しました。

ヨーグルトのフタに採用されたロータス効果。水滴がハスの葉の上をスルッとすべる撥水構造を私たちの暮らしに役に立てられたら…。
このように、生物や動物の生態を応用する技術は「バイオミメティクス(生物模倣)」または「バイオミミクリー」といいます。バイオミメティクスという考え方は1950年代にはすでに提唱されていましたが、1990年代後半からナノテクノロジーが急速に進化したことにより、再び注目が集まるようになりました。
ハスの葉のロータス効果以外にも、私たちの暮らしの中では、いろいろな生き物の構造が模倣され、応用されています。たとえば、話題になったところでは、サメの肌を模倣した高速水着。ほかにも、カワセミのくちばしを模倣した500系新幹線の先頭車両、ひっつき虫と呼ばれるオナモミの種子を模倣したマジックテープ、ヤモリの足の裏の構造を模倣した接着剤を使わない接着テープ、フナクイムシが木に穴を開けて掘り進む工程を模倣したトンネルの造り方などなど。このように、意外なところで意外なものが模倣され、応用されています。
私たち人間の歴史はせいぜい20万年ほど。一方、植物や昆虫は何億年も生きています。人間は、長い時間をかけてつくられた生物の特異な構造にはかないませんが、科学が進歩すればするほど、私たちの暮らしに、このバイオミメティクスを利用した技術がますますとり入れられることでしょう。
〈参考:北海道新聞2016年6月6日号夕刊7面 「バイオミメティクス(生物模倣)、動植物の生態 新製品のヒント」〉

6月に入り、ハスが見ごろを迎え、各地で美しいハスの花を見ることができます。梅雨で雨の日が多いですが、ハスの葉の上では水滴がスルリとすべり、気持ちいいほど水をはじいています。このハスの葉のように、ランプの表面で氷や雪がスルッと落ちてくれるLED信号機があれば…。LED信号機に高校生のアイディアが実用化される日が楽しみですね。

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