カササギです。佐賀では県の鳥に制定されており、スズメよりも良く見かけます。
いよいよ夕暮れとなり、逢瀬の時がやって来ます。
「久方の天の河原のわたしもり君わたりなば楫かくしてよ」(古今集 174番)
(天の川の河原にいる渡し守よ、彦星が川を渡ったら今度は帰れなくなるように船の楫を隠しておくれ)
織姫に成り代わっての歌です。彦星は船に乗って天の川を渡ります。
また、この歌では「船」につきものの「楫」が詠み込まれているのがミソ。「かじ」は読み手に「梶の葉」を想起させています。
梶の葉は当時の七夕の祭壇に欠かせないものでした。飾りとしてだけでなく、直接和歌や願い事が葉の上に書きつけられたそうです。現在、七夕を象徴する笹の葉の飾りは、実は江戸時代から始まったものなのだそうです。
さて、他にはこんな渡り方も…。
「天の川もみぢを橋に渡せばやたなばたづめの秋をしも待つ」(古今集 175番)
(天の川に紅葉の橋が渡されるからだろうか。織姫が秋の季節を待っているのは)
前述した通り、七夕の季節は秋。色づいた紅葉が橋となって天の川に架かるのだそうです。
また、同じ橋でもこのようなものも。
「いかなれば途絶え初めけむ天の川逢ふ瀬に渡すかささぎの橋」(詞花集 87番)
(どうして七夕の夜以外は途絶えてしまったのだろう。天の川に渡されたかささぎの橋は)
つまり、七夕の夜だけは、天の川にカササギの橋が渡る、という歌。
「カササギ」とは、「カチドリ」ともいう白黒の羽を持つ鳥です。この鳥が羽根を広げて連なり、天の川に橋を架けると言うのです。
また、船にも乗らず、橋など渡らず、
「天の川瀬々の白波高けれどただ渡り来ぬ待つに苦しみ」(後撰集 25番)
(天の川の瀬の波は高いけれど、待つことの方が苦しいのでひたすら渡って来ました)
と、浅瀬を踏み分けて天の川を渡る彦星の姿も詠まれています。
ちょっとだけアクティブな彦星。しかしさすがに川に飛び込み泳いで渡る…と詠んだ歌は見あたりませんでした。平安貴族男子はやはり草食系だったのかもしれません!?