「陰気ようやく重なりて露こごりて白色となればなり」
これは、天明8(1788)年の暦注解説書「暦便覧」にある、二十四節気「白露」についての解説。残暑厳しくとも、ようやく感じる朝夕の涼しさに、秋めいてきたと実感できる今日このごろ。太陽は黄径165度の点を通過し、季節は夏から秋へ、陽から陰へ。空気中の水蒸気が夜気で冷えた草木にふれることで露となり、白くきらめく様子から「白露」との名が付けられとのことです。
朝の白んだ空気のなか野山や里、川辺を散歩すると、秋の草花や稲の穂がまとった露が、朝日にきらきらときらめく美しい情景に遭遇することがあります。野原一面をおおう白銀のヴェールのような美しさに誘われ、一歩踏み込むと降りかかる露の名は「露時雨(つゆしぐれ)」。昼夜の寒暖差に時折すっと肌寒さを感じるなか、秋は刻々と深まってゆくのです。
このころはまた、秋の長雨というように雨天も多く、すっきりと晴れない日も多いのですが、ひとたび晴れわたった日の空は青く澄み切ってどこまでも高く、秋の季語にもなっている鱗雲や鰯雲が現れます。