先日勘亭流について紹介しましたが、勘亭流をはじめとする江戸文字のさまざまなバリエーションが見られるのが、千社札です。
もともとは寺社に詣でて、「札を納める」宗教的な行為として、参拝の証に自分の名前、職業などを書いた紙片を社殿や柱などに貼りつけるようになったのが、江戸時代から流行しました。これが千社札の始まりです。
しだいに趣味的になって、同好の士同士で交換するようになり、木版で作られるようになり、札の色彩や意匠、書体に凝るようになっていきました。
一種のサークルである「連」も形成されるようになり、交換会も開かれ、交換のためだけの大判の複雑な絵柄のものも作られるようになりました。
書体の多くは、勘亭流や寄席文字などに似た書体ですが、火消しの纏に使われる纏文字、商店の屋号に使われた髭文字、祭礼の提灯や団扇などに染め抜かれた牡丹文字など、さまざまな装飾的な書体が見られます。