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さて、最後に平成の歌をご紹介いたしましょう。
平成16年「幸」
選歌「彼と手をつなげることが幸せでいつも私が先に手のばす」
平成25年「立」
選歌「実は僕家でカエルを飼ってゐる夕立来るも鳴かないカエル」 12歳の男の子の歌です。
いつしか詠進歌は、日本人の普遍的な感興を自然の美しさに託して歌う「和歌」的なものから離れ、個人的で、ささやかとも言える体験や思いを表わす「短歌」的なものとなりました。
これも日本が平和になったからこその変容なのかもしれません。ちなみに平成に入ってからの詠進歌数は毎年2万首ほど。しかし、紹介したようなファンシーな味わいを持つ歌を、古式ゆかしく淡々と「彼と手をーーォ」と詠む披講の様子はなかなかシュールでありました。
そして今年、平成28年の勅題は「人」
御製「戦ひにあまたの人の失せしとふ島緑にて海に横たふ」
戦没者慰霊のことを詠まれた歌です。
天皇の御製も、年の初めにめでたい言葉を放つ、という趣を離れ、人々の哀しみや苦しみに寄り添うような歌となっています。しかしそのどちらもが、「天皇らしい」歌と言えるのではないでしょうか。
さて、来年のお題は「野」
「野火」「視野」などでも良いそうです。「野球」なんて…どうでしょうか?
時代を表し続ける「歌会始」の歌の歴史の流れに、一首を投じてみませんか?