料亭の太鼓持ち
「炎天燃えるばかり」の夏の盛り、真っ昼間「一八」という一人の男が街をさまよっています。
「暑いねえ。どこかでおまんまにありつかなくちゃいけねえ…」
この男は「太鼓持ち」。
現在ではもうほとんどなくなってしまった職業ですが、宴席で客をおだてたり、お酌をしたりして座をとりもつ芸人のことで、別名・幇間(ほうかん)とも言います。
お客についてまわって、お酒をごちそうになり、祝儀をいただくのが仕事です。
太鼓持ちとしては、おなかが空こうとも、自分のお金でお昼ごはんを食べるなどということはしたくないところ。
世話になっている客を訪ねてごちそうになろうと訪ね歩きます。
ところが暑い夏のこととて、客は避暑に行ってしまったりして、「カモ」がなかなかつかまりません。